税理士制度に影響を及ぼした主な事象

<地租改正>

資本主義社会以前の領主制の下では、領主は領地と領民とを支配するが、その経済的基盤は領民からの貢租収入にある。貢租とは、身分的・政治的支配に基づいて収奪される剰余労働のことである。幕藩体制から明治維新への転換は、石高制原理に基礎づけられた領主制から国民国家体制への移行であった。その内実は、領主-領民の身分的支配関係が、権利-義務関係を根幹とする国家-国民の近代的関係へと移り変わったところにある。国民の基本権利たる所有権保障の対象を土地に設定するとともに、地租を土地所有者の納税義務として規定した地租改正であった。統一的で公平な負担が資本主義に照応し、安定した租税収入が確保できる観点からも地租改正が近代日本における租税国家の原型を創りだしたということができる。

<シャウプ勧告>

昭和24年の初夏来日したシャウプ税制使節団は、わが国における税制と関連して、従来の税務代理士制度も詳細に検討を加えた結果、税務運営の民主的な発達を図るために税務代理業務の重要性を指摘した。そして、税務代理を行う者の水準を向上し、納税者及び税務官公署のためによりよき協力者となって、税務行政の適正円滑化を推進すべきであるという考え方から次の勧告を日本政府に対して行った。
(第一次シャウプ勧告<昭和24年8月27日>―抜粋)
(シャウプ使節団日本税制報告書附録第四編E節 附帯問題第四款 納税者の代理より引用)
「税務官吏に対する職業的立場からする納税者の代理業務は、現在税務代理士によって取り扱われている。これらの代理士は大蔵省の認可を受け、その活動並びに手数料は同省によって監督される。税務代理士数は現在三千二百人である。一方少数の弁護士と、そしてこれよりも多くの会計士が税務代理士の認可を受けているが、この業務の大部分は以前に税務官吏であった者によって行なわれている。現在純所得の客観的補足が不十分で、これに伴い税務署と納税者との交渉が重要性を増してきた結果は、主として、納税者の代理としての税専門家というよりも、むしろ上手な取引者ができあがっている。ある場合においては、この「取引者」という語は、買収・収賄及びこれに類似するものを意味するえん曲な語句である。
もし、単にえこひいき又は寛大を得るために交渉するのではなくて、納税者の代理を立派につとめ、納税官吏をして法律に従って行動することを助ける積極的で見聞の広い職業群が存在すれば、適正な税務行政はより容易に生まれるであろう。また引き続いて、適正な税務行政を行なうためには、納税者が税務官吏に対抗するのに税務官吏と同じ程度の精通度をもってしようとすれば、かかる専門家の一団の援助を得ることが必要である。したがって、税務代理士階級の水準が相当に引き上げられることが必要である。かかる向上の責任は主に大蔵省の負うべきところである。税務代理士の資格試験については、租税法規並びに租税及び経理の手続と方法のより完全な知識をためすべきである。税務代理士の活動の監督は厳重に行なわなければならない。多分納税者を査察していると思われる国税庁における特別な査察官の一団は税務代理士の誠実を査察するために活用せらるべきである。税務代理士の業務に関する苦情は遅滞なくかつ十分に調査されなければならない。税務代理士は、税務官吏に面接する場合に、その身分を容易に明らかにする小型の公式証明書を交付さるべきである。税務官吏もまた業として納税者を代理するようになることは望ましいことである。法律の詳細且つ明確な規定の下における客観的課税は、訓練された叡知を必要とする。
これらの専門家団のサーヴィスが十分に利用できないとすれば、納税者は、税務官吏の避け得られない誤謬に対して、その地位を適当に保持することが、不可能となるであろう。現在では、納税者は、その希望により、友人又はその他の個人に代理してもらってもさしつかえない。税務税理士の認可を受けなければならないのは、人が代理業に従事する場合に限られる。特別な場合に、納税者を個人的立場において援助するというこの能力は、存続せらるべきである。そうでないと、特に税務行政の現状に鑑み、納税者による異議の申立は、多くの場合余りにも費用がかかることとなろう。しかし、結局税務行政が改善せられ、より専門化し、かつ、階級としての税務代理士の能力と堅実性が保証されるようになれば、納税者代理をその階級に限定することが、おそらく望ましいことになるであろう。少なくとも、このことは、納税者のためになされる訴願の取扱いに関して然りである。各地の国税局及び税務署に対し、納税者を代理することは、本質的には個人的な問題である。事件は、個人的起訴の上に立って議論検討さるべきである。税務代理士又はその他の代理人は、通常その特定の出頭を特定の事件に限定すべきである。訴願及び異議の申立を、一括して取り扱うことは適当な手続ではない。租税事件は、一括して論議決定せられるべきものではない。納税者の階層に対するその影響の面から、全般的な行政的手続を検討することが妥当である。しかし、租税債務及び租税に関する論争を一括して検討することは、納税官吏によって許可さるべきものでもなく、また納税者の代理人の参加すべきものでもない。」
第二次シャウプ勧告<昭和25年9月21日>―抜粋
*(四)納税者の代理人
われわれは、次のことを勧告する。
まず、弁護士及び公認会計士については、人物試験以外の試験を経ずに、税務当局に対し納税者を代理することを認めるべきである。
次に、現時開業中の税務代理士については、人物試験を受けるだけでその業務を継続することを認められるが、今後税務代理士の地位を得ようとする者は、専門知識に関する筆記試験に合格しなければならないこととする。また、現在計理士(税務代理士でないもの)であって、納税者の代理行為をしようとする者は、人物試験と専門知識に関する筆記試験とに合格しなければならない。今後は新しい計理士はあり得ない。このようにして、税務官吏に対し納税者を代理する権限を国税庁によって認められた者は、その氏名と職種とを記載した証票を与えられるであろう。 (シャウプ使節団第二次日本税制報告書C所得税の執行に関する問題 四、納税者の代理人より引用)
(F)納税者の代理
A 納税者を代理する専門家
能率的な租税制度は、税務当局に対して納税者を代理する資格のある専門家の存在を必要とする。このような代理は、個人納税者にその個々の事件において、税務行政上の誤謬に対し必要な保護を与えるものである。加えるに、この専門家は、行政制度について見識のある批判を加える能力があるから、このような制度は、行政事務全般にわたる牽制として役立つのである。その結果、行政能率を増進させ、決定を一層公正ならしめるために、絶えず必要な刺激が与えられることになる。着々と納税者の代理者の数が増し、その素質が向上するということは、日本における税務行政の成功にとっては、極めて重要なことである。
(シャウプ使節団第二次日本税制報告書附録書 所得税及び法人税の執行に関する問題、(F)納税者の代理より引用)

弁護士法公布・弁護士法全部改正

日本の弁護士の制度は、明治時代になり近代的司法制度の導入とともにフランスの代言人に倣って創設されたもので、代言人と呼ばれていた。ただ、代言人の地位は決して高くはなく、軽蔑されることも多く、また、初期にはきちんとした資格制度が存在していなかったために、中には悪質な者も存在した。 明治26年3月4日にドイツ帝国弁護士法を範とした近代的な弁護士法が公布され、代言人に代わって弁護士という名称が使われるようになった。当時の弁護士は司法省の監督のもとにおかれ、その独占業務も法廷活動に限られていた。弁護士は裁判官や検察官よりも格下とされ、試験制度も異なっていた。 現在の弁護士法は昭和24年6月10日に公布された。これは、従前の弁護士法の全部改正となったものである。国家権力からの独立性が認められた。また、司法試験及び司法修習によって裁判官、検察官、弁護士の資格試験及び修習制度が一元化されることとなった。

計理士法公布・公認会計士法公布

東京、大阪を中心に全国で新たな企業が生まれ、企業の会計監査等の必要性が強く認識されるようになり、昭和2年、わが国最初の法定された職業会計人の基となる計理士法が公布された。同法は会計士制度を積極的に確立しようとするものではなく、計理士の資格を認めることで、自称会計士の取り締まりに利用しようという消極的なものだった。 終戦を迎えた日本では、ポツダム宣言受諾に伴いGHQによる間接統治が開始され、財閥の解体に伴う株式の放出によって投資家層が大衆にまで拡大していったこと、復興のための外国資本導入が不可欠であったことから、計理士制度は大きな変革を迫られた。こうして公正な株式取引市場の確立と並んで、投資家保護を目的とする会計監査制度とその制度を支える高度な会計の専門家を望む声が内外から高まり、昭和23年公認会計士法が成立した。