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第41条の2使用人等に対する監督義務

税理士は、税理士業務を行うため使用人その他の従業者を使用するときは、税理士業務の適正な遂行に欠けるところのないよう当該使用人その他の従業者を監督しなければならない。

この規定は、他士業にない税理士特有の規定である。
税理士資格が税理士個人に与えられていること、及び税理士業務が公共性の高い使命に基づく独占業務とされていることから、その使用人等の行為によって納税義務者の信頼を損なうことがあってはならず、使用者の使用人に対する責任に加えて、税理士の自覚をさらにうながす趣旨で定められている。

制定の経緯

この規定は、多数の関与件数をもつ税理士事務所の実態を踏まえ、2か所事務所禁止規定とともに、税理士事務所の使用人による非違行為が散見されたことよる使用人に対する十分な監督が求められ昭和55年法改正で新設された。その改正の過程で、使用人の数を、司法書士のように使用人たる補助者は5人に制限するとの当初案もあったが、勤務する税理士を置いた場合の法律関係の複雑さ等から断念された。

使用人その他の従業者

税理士と雇用関係にある使用人のほか、雇用関係に基づかない者であっても税理士業務に関して税理士の支配、監督権の及ぶすべての者を含むものであり、税理士業務に従事する家族従業者も含まれる。

【参考】

【国会議事録(抄)】昭和54年6月5日 衆議院大蔵委員会
安田純治(日本共産党)
(中略)
ほかの士法を見ますと、どうもこういう規定はないようでございますが、特に税理士法だけにこの使用人の監督義務を新設した理由はどういう理由か。守秘義務というのが別にございますので、これだけで十分ではないかと思いますが、何か特別な理由があるのでしょうか。

福田幸弘政府委員(大蔵大臣官房審議官)
税理士の仕事は、独占権を与えられて特定の範囲において税務官署との折衝という一番シリアスなところを担当するわけです。本来は本人が、税理士が立ち会うべきものであるわけです。したがって、十分に内容をそしゃくして臨むことが大事ですが、実際問題になりますと、多くの使用人を抱え、実態についてはなかなか承知していないということが依頼者に対して不測の損害を与える場合もあるわけです。ですからここは、立法例からいくと司法書士は5人しか補助者を置けないわけです。そういう形で、本人の目の届く範囲、補助者の限度があるわけです。弁護士は、先生もそうですが、本人が法廷に立つというはっきりした立場で自己責任をとっておられます。ここは税理士さんがそれだけ大事な仕事をやる以上は、使用人を使うにしても十分に監督していただきたいという代理関係から来る問題と、それからもう一つは税の特性から来る責任の問題から、使用監督の責任はほかの業法に見ない重要さを持ってきます。
これは検討過程において、先ほどの司法書士みたいな人数制限の議論もございました。しかし、これはまた勤務税理士を置くといたしますと法律関係が複雑になります。また、税理士法人というのも代理関係からいってなかなか説明しずらい。要は、税理士さんが内容をよくそしゃくしてもらって税務署の方に臨んで自分の責任でやってもらうということですから、その趣旨をあらわすためには管理監督ということを考えなければいかぬと思うのです。これは前の改正法にも入っております。また、非違事件が相当出ておるということも考えあわせますと、これが設けられるに十分の理由があると考えます。
それから守秘義務は、これは依頼者との関係の問題ですから、いまの問題とは別の面ではないかと思います。

安田純治委員(日本共産党)
(中略)
今度の法案によると税理士事務所は一つに限る。にもかかわらず特にこういう規定を置いているが、対外的にもし損害を与えたりなんかすれば、いまの民法の使用者責任で十分賄えるわけですね。それから、対内的にその人を懲戒したり解雇したりする権限は持っておるわけです。ですから、監督にあるいは責任を負うことに十分なはずでありまして、そういう点で、この41条の2の監督をしなければならないという規定を置くことによって、税理士がうっかりしますとあるいはうっかりしたと思われると、先ほどの竹本委員の質問じゃないけれども、この法律に違反した場合にはすべて一般的懲戒処分ですから、非常に威嚇的な感じを持つのではないかということが一つであります。
適当な条文ではないし、ほかの立法例もない、士法の横並びから見てもきわめておかしいということを指摘しつつ、この条文の中で、「使用人その他の従業者を使用するときは、」とありますが、「その他の従業者」というのは何ですか。

福田幸弘政府委員(大蔵大臣官房審議官)
第一点についてお答えいたします。
これは事務所が一つという原則になりますが、関与件数という問題があろうと思うのです。庁の方で補足いたすかもしれませんが、7、80件平均関与している実態で、お1人の税理士さんがどこまで目を通せるかという実態論があります。そこで勤務税理士の話も出たのですが、これは依頼者から見て十分に見てもらっているということでないと、不測の損害を受けることにもなるわけです。
ですから、これは実態がそのような多くの件数を抱えており、しかも代理関係で税理士さんが自分の責任でやるという立場なんですね。ですからそういう意味では、ほかの場合と違った、特に税の場合についてはその税理士としては十分な監督をしてほしいというのは、また依頼者からの要請でもあろうと思うのです。そこで、ほかの業法にない、税の観点から、しかもたくさんの関与件数を持っておるという実態を踏まえますと、十分な監督をしてほしい。しかし、これが懲戒の問題でどうなるかは、これはやはり常識的な判断であろうと思うのです。倫理規定というのはなくてもいいということもあるかもしれませんが、やはりその趣旨があるということはそれだけ姿勢を正すわけです。ここでいろいろな非違事件が出ております。この非違事件の内容は庁の方で御説明してもいいのですが、にせ税理士が件数として一番多い。その次に、贈賄にかかわっておるとか脱税相談に使用人が応じたとか、その種のいままでの処分件数があるわけであります。それはやはり税の特殊性から来る非違事件でございまして、これは使用人として行っておるわけですから、監督者、すなわち本来自分がやるべき税理士が十分の責任を全うするということは当然であろうと思うのです。それが懲戒に至るかどうか、今度の規定が入って、人を使っておる立場でそれを監督してないということを問われるかどうかは、これは実際常識的な判断で、しかも懲戒審査会の議を経ますので、この辺はむしろ義務規定としてそういう中味も見ないで、不測の損害を与えないように、しかも使用人が非違を起こさないようにしてほしいというのは、これはわれわれの立場でもありますけれども、納税者からも謝金を払っている以上当然の要請であろうと思います。
第2問でありますが、「使用人その他の従業者」でございます。これは使用人は法律的な狭い意味で言いますと、雇用関係にあるいわゆる使用人ということで考えられるわけでありますが、この雇用関係以外に税理士の支配監督権が及ぶ場合があります。自分は雇用関係がないと言えば終わってしまう場合がありますが、実際は税理士さんという職責を持った方の支配監督のもとで働いておられるということも含めないとその趣旨が生かされません。ただ御懸念のある場合、これは例としましては事業の専従者あたりがそうだと思うのです。専従者として子供を使っているとかいうときには、雇用関係はないのですが、実際それは支配関係のもとに仕事をしていますから、そういうことを含めておる。要するに事業専従者がその例であります。たとえば商工会の事務員とかそれから一般事業会社の経理担当者というものは、これは全然関係ございませんので、それは入らないというのは当然です。

安田純治委員(日本共産党)
専従者というと、それは税理士の方の専従者ですか。

福田幸弘政府委員(大蔵大臣官房審議官)
いま「その他の従業者」と申しましたのは、税理士さんがいまして、そして、雇用関係があって使っておられる方がある。しかし、自分の奥さんがい、子供がいる。雇用関係はないけれども、税理士さんの支配監督のもとに仕事をやっている、そこまで含める意味の規定でございます。ですから、全然別の会社の従業員とか商工会のどこかにいるというのは、全然税理士さんと関係ございませんから、「その他の従業者」というところにはもちろん入らないということを申し上げたわけであります。

安田純治委員(日本共産党)
たとえば青色申告会とか商工会の職員なんかが実際記帳の指導をずっとやっている。ことに弁護士の業務のように、大体が一回きりの事件だったら別ですけれども、まさにあなたのおっしゃるような税務の特殊性といいますか、まず記帳から始まりますと継続的なものですね。これは1年間なら1年間最低継続するわけです。そういう結論が結局は最後に申告書に書き出されるわけです。そうすると、そういう途中のプロセス、記帳の段階でいろいろ税理士に聞いたり何かして指導する。したがって、税理士からも直接の雇用関係はもちろんないのですけれども、ある程度指示命令に従って動いておるというような場合でも、商工会の職員、青申会なんかの場合、そういう職員はどうなりますか。

福田幸弘政府委員(大蔵大臣官房審議官)
これはあくまでその税理士の使用しておるという雇用関係が基本になっていますから、それの抜け道的な、雇用ではないけれどもという方がその事業所におるという場合を想定しておりますので、その税理士さんとの関係で常時雇用関係にあるのが原則で、しかし雇用関係はないが支配監督権として常時あるという社会的な、外から見れば使用人的に見られておる場合を指しています。
したがって、御指摘の点よくわかりませんが、税理士さんは税理士事務所に行って、そして商工会というのは別にあるわけですから、その間の関係は別の契約関係、雇用関係じゃないと思うのですね。ですから、雇用関係が基本にあって、それに類する場合を意味するというわけです。
【国会議事録(抄)】昭和54年6月5日衆議院大蔵委員会(質問・答弁)
永原稔委員(新自由クラブ)
(中略)
先ほど安田委員の方から質問がありましたので重複を避けますけれども、41条の2、これをどうしても新設しなきゃならぬのかということについて、もう一度御意見を承りたいと思います。

福田幸弘政府委員(大蔵大臣官房審議官)
使用人等の監督義務の御質問でございますが、これは前回、39年法にもございましたが、使用人を雇いまして自己の業務に従事させる場合に、使用者がその使用人を監督すべき立場にあるということはこれは当然であります。ただこの場合、税理士につきましては、税理士は特別の資格を持って独占権を与えられて、しかも重要な納税義務に関する折衝、申告等に当たるという立場でございますので、非常に人的な面を依頼者も重視しておるわけでございます。また、われわれもそこを評価するわけでございますが、したがって、本人がおやりになっている限りは問題がないのですが、実態は使用人をたくさんお使いになって関与件数も多いというときに、やはり十分見てもらうためには、使用者の使用人監督ということは、ほかの立法例にないやはり重要な問題であろうと思います。
具体的な非違事件等からもこれの重要性がうかがわれますので、これについては庁の方で御説明があろうかと思いますが、やはりこの種の法の規定があるということは、税理士の業務の性格に照らして適当であろうと思いますし、実際中身をよく見るということが基本ですから、それを勤務税理士とかいろいろな形で処理しようとしても、これが税務代理からくる制約があってなかなかできないとなれば、そこはそういう形で趣旨を徹底するということは、やはり納税者から見てもわれわれから見ても望ましい姿であろうと思います。ですから、是非ということの判断でございますけれども、あってしかるべき規定である、こういうふうに考えます。