第2条税理士の業務

税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和25年法律第226号)第10条の4第2項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。第49条の2第2項第10号を除き、以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 税務代理(税務官公署(税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする。以下同じ。)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法(平成26年法律第68号)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(これらに準ずるものとして政令で定める行為を含むものとし、酒税法(昭和28年法律第6号)第2章の規定に係る申告、申請及び審査請求を除くものとする。以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)
二 税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第34条第1項において同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)で財務省令で定めるもの(以下「申告書等」という。)を作成することをいう。)
三 税務相談(税務官公署に対する申告等、第1号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(国税通則法(昭和37年法律第66号)第2条第6号イからヘまでに掲げる事項及び地方税に係るこれらに相当するものをいう。以下同じ。)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)
2 税理士は、前項に規定する業務(以下「税理士業務」という。)のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。ただし、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない。 3 前2項の規定は、税理士が他の税理士又は税理士法人(第48条の2に規定する税理士法人をいう。次章、第4章及び第5章において同じ。)の補助者としてこれらの項の業務に従事することを妨げない。

税理士の業務(第2条)

税理士の業務

※電子申告をはじめ、電磁的記録をもってする事務を含む(基通2-1)

「他人の求めに応じ」

「他人の求め」とは、その「他人」が、税理士に対して、その者のために、「税理士業務」の内容を構成する行為を「業として」行うことを内容とする契約の申し込みをすることであり、「求めに応じ」とは、その契約の申し込みを受けた税理士が、その申し込みの承諾をすることである。このことについては、「税理士は、他人の求めに応じて税理士法2条に規定する租税に関し、税務代理、税務書類の作成等の事務を行うことを業とするものであります。この業務は、他人の求めに応じた税理士が直接行わなければなりません。」という国税庁の見解が参考になる。

「租税」

税理士業務の対象税目は、原則として国税及び地方税のすべてである。ただし、税理士の援助を特に要しないと認められる税目については業務の対象から除外されている。具体的には、印紙税・登録免許税・関税・法定外普通税・自動車重量税、電源開発促進税・とん税・特別とん税及び狩猟税が除外項目とされている。
なお、法49条の2第2項10号(租税に関する教育その他知識の普及及び啓発のための活動に関する規定)を除くとしているのは、その租税と税理士業務の対象である租税とを明確に区分するためである。
従来、税理士業務の対象税目は、法定列挙されていたが、昭和55年の改正において、原則として国税及び地方税のすべてを対象税目とするいわゆる包括規定をもって定められた(参考「国会議事録(抄)昭和54年12月7日衆議院大蔵委員会(答弁)」)。これは、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現に資するために税務の専門家としての税理士の制度が設けられている趣旨からすれば、原則としてすべての税目を税理士業務の対象とすることが合理的であり、納税義務者にとっても便宜であるとの考えによるものである。

【参考】

【国会議事録(抄)】昭和54年12月7日衆議院大蔵委員会(答弁)
福田幸弘政府委員(大蔵大臣官房審議官)
包括規定にしたということは非常に今回の改正の重要な点でありますが、先ほど申し上げました第1条の税務専門家ということからくると、これは当然の規定だろうと思うのです。従来の規定は、御存じのとおりに限定されていまして、国税ですと、所得税、法人税、相続、贈与ということで、それ以外は扱えないことになっています。地方税も事業税、市町村民税、固定資産税、こうなっております。これはやはり考え方が、当時古い考え方と申しますか、申告納税の範囲に限定しておったわけでしょうが、申告納税の範囲が広がってきたということ及び税目もふえております。その過程において事務所事業所税が設けられた。その際にも、いまの規定でいきますと行政書士にいってしまうわけでありますが、これはやはり税務の専門家である税理士にいくというのがたてまえ上正しいわけでありまして、これは前回38年の12月の答申においても、税に関しては税の専門家が扱うというのが納税者のためであるということを書いておりまして、前回の改正法も同じことが書いてあります。したがって、これはたてまえ論として正しいと思いますが、具体的に何かと申しますと、今後どういう税目が発生するかわかりませんけれども、過去の最近の例は、いま申し上げました事務所事業所税、こういうものができた際に、これが当然のことながら行政書士にいってしまったということを経験として持っております。またどういうものができるかは、これは仮定の問題でありますが、税として名のつく専門的な知識を要するものであれば、これは行政書士でなくて税理士さんにいくというのが正しいやり方でありますし、第1条の趣旨に沿う、こう思います。

「業とする」

「業とする」とは、法2条1項各号に掲げる事務(税務代理、税務書類の作成又は税務相談)を反復、継続して行い、また、反復、継続して行う意思をもって行うことをいい、営利の目的ないし有償無償の有無の別を問わないとされている(基通2-1)(参考「昭和24年7月22日最高裁判所大法廷昭和24年(れ)46号」、「昭和40年2月26日東京高裁昭和39年(う)1991号」)。
ただし、国税又は地方税に関する行政事務に従事する者がその事務を遂行するために必要な限度においてこれらの事務を行うことは、たとえこれを反復継続する場合であっても「業とする」ものには該当しない(基通2-1)。
また、租税に関する講演、質疑応答などのうち、具体的事実に立ち入らず、一般的に税法の内容を説明し、これを解明することは税理士業務の範囲外となる。その他、会社の使用人等が使用者の命によりその会社の税務書類を作成したり、税務当局と折衝することについても、使用者の手足として行動しているものであって税理士業務を行っていることにはならない。しかし、雇用関係を装って事実上は税理士業務を行うことと同様な業務を行っているような場合は、税理士業務を行っているということになる。

【参考】

【昭和24年7月22日最高裁判所大法廷昭和24年(れ)46号】
税務に関することは法律的にも技術的にも相当の知識経験を必要とし事柄が国家の税務行政の成否にも関係するところが甚大である処から特に同法に於て主務大臣の許可を受けた者でなければ税務代理士として同法第1条に規定するような事項を業とすることが出来ないものと定めたものであって従って同法に所謂税務代理業とは不特定多数の他人の委嘱を受け反覆継続の意思を以て書類を作成審査請求其他の代理若は相談等同法第1条所定の事項を為すことに従事することを謂うのであって必らずしもこれに対し委嘱者から報酬を受けることを要件とするものではない・・・。
【昭和40年2月26日東京高裁昭和39年(う)1991号】
税理士法第2条にいう「他人の求めに応じ(中略)左に掲げる事務を行うことを業とする」とは、反復継続の意思をもって他人の求めに応じて同条各号所定の事務を行えば足り、その他に、その他人が不特定であることないし多数であること、その事務を営利の目的をもって行ったことなどを必要としないものと解される。

税務代理

「税務代理」とは、税務官公署に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法の規定に基づく申告等につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行することである。
「代理」とは、代理人が本人に代わって法律行為〈準法律行為を含む。〉(意思表示及び法律効果を伴う観念通知・意思通知等)を行い、又は法律行為を受領する行為をいい、その法律効果は直接本人に帰属するものである。このように、「代理」は、法律行為の場合について用いられる概念である。これに対し、「代行」は、本人に代わって行う事実行為を示している。
税理士が納税義務者のためにいわゆる「税務代理」をする場合には、税務調査に際し、税理士が納税義務者のために事実の解明、陳述等法律行為とはいえない行為によって援助する事例が多い。このような行為が税理士業務に該当しないこととなれば、納税義務者の期待に反することとなる。それゆえ、「税務代理」には、法律行為の「代理」にとどまらず、事実行為の「代行」も含まれることを明らかにしているのである。昭和55年の改正において、「代理」と「代行」を並列して定めることによって、これが立法的に明確化された(参考「国会議事録(抄)昭和55年3月27日参議院大蔵委員会(答弁)」)。
昭和55年改正の国会質疑では、「代理」・「代行」について、「納税義務者への援助」・「納税義務に関する重大な問題」・「税務専門家としての判断」という三つの要素(独占の範囲)から、「専門家が独占権を持って代理・代行する。主張・陳述する。」という応答がされている(参考「国会議事録(抄)昭和54年6月5日衆議院大蔵委員会(答弁)」)。

【参考】

【国会議事録(抄)】昭和55年3月27日参議院大蔵委員会(答弁)
福田幸弘政府委員(大蔵大臣官房審議官)
税務代理の範囲につきましては、従来から事実行為の代行を含む趣旨に解してきております。しかし、代理という言葉が通常法律行為の場合について用いられる用語でございますので、今回の改正では、税理士業務の範囲の明確化を図るという見地から代理し、代行としたものでございまして、実質的には税務代理の範囲を拡大したものではございません。
【国会議事録(抄)】昭和54年6月5日衆議院大蔵委員会(答弁)
福田幸弘政府委員(大蔵大臣官房審議官)
(中略)
代理の概念が非常に法律行為的に狭く解されて、納税者に対する援助行為に欠けることがあるということが39年の答申にあるわけです。ですから、その代理概念の広がるところのその広がる範囲の問題になっていますね。ですから、納税者に援助をするというのが一つの基準だと思います。それから、具体的納税義務に関するというその納税者から見れば重大な問題に影響する問題の範囲でなければいけないという問題があります。それから、やはり税務専門家としての判断を加えるという、その三つの要素かと思うのです、これは私の考えですが。そうしますと、おのずからここは独占の範囲になってきますので、そこで代理というのははっきりいたしております。
次に代行が事実行為、事実行為の中が主張、陳述の範囲はどこか、こういうふうに法律的になってくると思うのですね。主張は、ここで意見を申しますから、先ほどの基準に入ってくると思います、納税義務に影響するし専門家の援助を要するということで。
あと、この範囲が、これは日本語の説明が非常にむずかしくて、英語では表示行為という言い方でやっておりますけれども、要するに、税務官署に対してその納税者にかわって大切なところを申し述べるということなんですね。ですから、これは単なる事実の解明だけであって直ちに具体的な納税義務に影響したりしない、また、専門的な知識も要しないその種の単なる、これは前の答申にございますが、財務諸表の説明、事実の説明というものは含まれないと言っております。ですから、そこのところは、単なる事実の説明にとどまるというものは代理、代行には入らない、主張、陳述には入らないと考えます。これはケース・バイ・ケースになりますので、その際納税者がどういう立場に立つか。そこで援助者の発言を得なければ税額に影響したりするというケースになりますと、これはやはり専門家が独占権を持ってそこを代理、代行する、主張、陳述するということであろうと思うのです。

税務書類の作成

「税務書類の作成」とは、税務官公署に対する申告等に係る申告書等を作成することである。この場合、申告書等は、租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類に限られる。また、この税務書類の作成に係る申告書等にはその作成に代えて電磁的記録を作成する場合におけるその電磁的記録も含むとされている。
いわゆる財務諸表については、もともと租税法の要請のみにより作成されるものではないので、ここでいう「申告書等」には含まれない。
「書類を作成する」とは、自己の判断に基づいて作成することをいい、単なる代書は含まれない(基通2-5)。

税務相談

「税務相談」とは、税務官公署に対する申告等、法2条1項1号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずることである。「相談に応ずる」とは、具体的な質問に関して答弁し、指示し、又は意見を表明することをいう(基通2-6)ものであって納税義務者の具体的事実について行うことを必要とし、一般的な租税法の解説、講習会において仮説例に基づいて税額の計算練習をするような行為は「税務相談」には該当しない。

付随業務

税理士は、税理士業務のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。
この規定は、昭和55年の改正において創設されたものである(参考「国会議事録(抄)昭和54年6月1日衆議院大蔵委員会(質問・答弁)」。この規定が設けられた趣旨は、租税法に基づく税務計算が、企業の会計経理に関する知識を踏まえてその基礎の上に租税法に定められた納税義務の計算を行うもので、税理士の実際上の業務は、財務書類の作成や記帳の代行と極めて密接な関連があり、これらの業務と併せて税理士業務を行っている実態にあるため、こうした現実を踏まえて、税務書類の作成、税務相談という本来の税理士業務の委嘱を受けた納税義務者についてその税理士業務に付随して会計業務を行うことができることを、確認的に明らかにすることにより、税理士の税務会計面における専門家としての地位を高めることにある。
この「付随業務」は法52条の独占業務には含まれず、この規定を設けたからといって、税理士が税理士業務の委嘱者以外の者について会計業務を行うことが制限されるものではない。
当然のことながら、税理士は、会計業務であっても財務書類の監査、証明のように他の法律で行うことが制限されている事項については、行うことができない。
なお、その他財務に関する事務としては、例えば、税理士業務に付随して行われる社会保険労務士業務(社会保険労務士法27但書、同法施行令2二)などがある。

【参考】

【国会議事録(抄)】昭和54年6月1日衆議院大蔵委員会(質問・答弁)
愛知和男委員(自由民主党)
次に、公認会計士の行う業務分野との関連につきまして確認をしておきたい点が一つ二つございます。
最初に、会計業務でございますが、会計業務は現行法上だれでも行い得る業務でありますけれども、これをこのたびの改正では税理士の付随業務として規定をしたわけでございますが、その目的とするところはどういうところでございますか。

高橋元政府委員(大蔵省主税局長)
仰せのとおり、財務書類を作成いたしますとか、会計帳簿を作成いたしますとか、そういうことの代行という会計業務は自由業務でございます。税法に基づく税務計算と申しますのは、会社経理ないし会計経理に関する知識を踏まえて、その基礎の上で必要な調整計算を行っていくということでありますので、実際面においてもこういう意味で、財務書類の作成、記帳の代行といった会計業務が税理士さんのお仕事の中で相当のウエートを持っているだろうと思います。
今度御提案申し上げております改正案で第2条に2項を置きましたのは、こういう現実を踏まえまして、税務代理、税務書類の作成、税務相談という2条1項各号に掲げております本来の税理士業務の委嘱を受けた納税義務者について、税理士業務に付随して会計業務を行うことができるということを確認的に明らかにする、それによって税理士の社会的信用保持という面での効果を期待しようということであります。
この法に新しく御提案しております2条2項の中にもありますように、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されているような会計業務につきましては、この2項を新しく設けましたからといって税理士さんができるということでないわけで、公認会計士のやっておられる財務書類の監査、証明のようなものがこれによって税理士の業務に取り込まれるわけでは全くないということと、納税義務者の委嘱を受けなくて会計業務を税理士さんが一般的におやりになるということ、これは自由業務でありますから、それが制限されるわけではない、こういう合意を持っておるわけでございます。

愛知和男委員(自由民主党)
重ねて確認をさせていただきますと、今回のこの新しい規定によって従来公認会計士が行っております分野にいささかの変更もない、税理士がその分野に進出をしてきて公認会計士の従来からやっておりました分野が侵されるようなことはない、そのように解釈してよろしゅうございますか。

高橋元政府委員(大蔵省主税局長)
先ほどもお答え申し上げましたように、これは本来自由業務である会計業務というもの、それを行うことができることを確認的に明らかにしたわけでございますから、この新しい2項を置きますことによって、公認会計士、税理士、それぞれの分野に法律上の変更があるというふうには考えないわけでございます。

所属税理士制度

法2条3項(税理士の業務)の規定により税理士又は税理士法人の補助者として常時税理士業務に従事する者は「補助税理士」として、その従事する税理士又は税理士法人が委嘱を受けた事案について、自らの名において税理士業務を行うことができることとされている(法2③、旧規8二口、旧基通2-8)。この補助税理士制度は、平成13年の改正において、従前のいわゆる「勤務税理士」について制度化されたもので、補助税理士は、勤務先の税理士事務所や税理士法人を所属事務所として、自身の名前で税理士業務を行えることができることとされたものである。
ただし、財務省令において、税理士等の補助者として「常時」従事することとされていること等から、補助税理士は、自ら委嘱を受けて税理士業務を行うことはできなかった(旧基通2-8)。
平成26年の改正において、税理士業務の活性化を図る等の観点から、補助税理士は、その使用者である税理士又は税理士法人の承諾を条件に、他人の求めに応じ自ら委嘱を受けて税理士業務に従事することができることになった(規1の2②)。また、この見直しに伴い、その名称(呼称)についても従来の「補助税理士」から「所属税理士」に改めるとともに、登録事項、税務書類等への付記等について次のとおり所要の見直しが行われた。
① 登録事項
登録事項について、法2条3項の規定により税理士又は税理士法人の補助者として「当該税理士の税理士事務所に勤務し、又は当該税理士法人に所属し、同項に規定する業務に従事する者(所属税理士)」(改正前:「常時同項に規定する業務に従事する者(補助税理士)」)に改められた(規8二ロ)。そして、法2条3項に定める「他の税理士又は税理士法人の補助者」として従事する税理士業務については、この所属税理士が行うものとされ、法律関係の明確化が図られた(規1の2①)。

② 所属税理士の業務
所属税理士の税理士業務への従事それ自体については、基本的に従前と変わるものではないが、所属税理士が他人の求めに応じ自ら委嘱を受けて税理士業務に従事しようとする場合には、顧客等に対する責任の所在の明確化、顧客の情報管理(守秘義務)の徹底を図る等の観点から、その使用者である税理士又は税理士法人の承諾を得ること、自らの責任において業務を行うこと等を委嘱者に対し明示することなど、次のような手続を踏まねばならない。

イ まず、所属税理士が他人の求めに応じ自ら委嘱を受けて税理士業務に従事しようとする場合には、その都度、あらかじめ、その使用者である税理士又は税理士法人の書面による承諾を得なければならない(規1の2②)。
この承諾を得た所属税理士は、次に掲げる事項を記載した書面にその承諾を得たことを証する書面の写しを添付し、これを委嘱者(納税者)に対して交付するとともに、当該事項につき説明しなければならない(規1の2③)。
a 所属税理士である旨
b その勤務する税理士事務所の名称及び所在地又はその所属する税理士法人の名称及び勤務する事務所
(当該事務所が従たる事務所である場合には、主たる事務所及び当該従たる事務所)の所在地
c その使用者である税理士又は税理士法人の承諾を得ている旨
d 自らの責任において委嘱を受けて税理士業務に従事する旨

なお、この書面の交付に当たっては、所属税理士は、当該書面に署名押印しなければならない(規1の2④)。
ロ 次に、所属税理士は、委嘱者に対して上記の説明を行った場合には、その旨を記載した書面にその委嘱者の署名押印を得るとともに、その写しをその使用者である税理士又は税理士法人に提出しなければならない(規1の2⑤⑥)。
ハ なお、所属税理士は、上記の承諾を得て自ら委嘱を受けた税理士業務が終了したとき又は承諾を得たにもかかわらず委嘱を受けるに至らなかったときは、速やかに、その使用者である税理士又は税理士法人にその旨を報告しなければならない(規1の2⑦)。
③ 税務書類等への付記
所属税理士が他人の求めに応じ自ら委嘱を受けて税理士業務に従事する場合には、税務書類等に税理士である旨、その勤務する税理士事務所の名称又はその所属する税理士法人の名称に加え、「直接受任」(自らの責任において委嘱を受けて税理士業務に従事することをいう。)である旨を付記する(規16③)。


◆所属税理士制度(税理士法施行規則第1条の2)に関するQ&A

税理士登録区分の違い
(第2条③、30条、33条、40条、48条の14、規1条の2、8条二、16条、18条、
基通33-1、18-1)

  開業税理士 所属税理士 社員税理士
自己の事務所 設置が必要 設置できない 設置できない
納税者等との委嘱契約 納税者から直接委嘱を受ける 原則、納税者から直接委嘱を受けることはできない
開業税理士等との委嘱契約を通じて受任
よって、税務代理権限証書は提出できない
ただし、あらかじめ、従事する開業税理士等の書面による承諾を得ることにより、納税者から直接委嘱を受けることができる
その場合は、税務代理権限証書の提出ができる
納税者から直接委嘱を受けることはできない
税理士法人との委嘱契約を通じて受任
開業税理士(自己以外)又は税理士法人の業務への従事 自らの名において税理士業務は行えない
(署名押印や調査立会いはできない)
ただし、共同代理又は復代理により税理士業務を行うことができる
1.開業税理士等の補助者として、自らの名において税理士業務を行える(署名押印「所属税理士表示」や調査立会いができる)
2.従事する開業税理士等以外の者の補助者としての従事はできない
出資する税理士法人の行う業務以外はできない

第2条の2税理士の業務

税理士は、租税に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。
2 前項の陳述は、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。ただし、当事者又は訴訟代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、又は更正したときは、この限りでない。

税理士の補佐人制度は、租税に関する争訟が高い専門技術性を有していることにかんがみ、行政上の不服申立て手続きと同様、訴訟手続きにおいても、税務の専門家である税理士が補佐人という立場を通じて納税者を援助する活動を常に行い得るようにすることが、ひいては、申告納税制度の円滑、適正な運営に資することになるとの趣旨から、平成13年の改正で設けられた(参考「国会議事録(抄)平成13年5月25日衆議院財政金融委員会(答弁)」、「『司法制度改革審議会意見書‐21世紀の日本を支える司法制度‐』(公表日:平成13年6月12日)」)。
この制度は、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述することを認めているものであり、訴訟代理人である弁護士が出廷しない場合には、税理士は裁判所の許可を得ないで出頭して陳述することは認められていない。また、税理士は訴訟事務に関しての専門家ではないため、陳述するにとどまり、尋問はすることができないと解されているが、実務上は、裁判官の訴訟指揮権の範囲内において尋問している事例があるといわれている。

【参考】

【国会議事録(抄)】平成13年5月25日衆議院財政金融委員会(答弁)
尾原榮夫政府参考人(財務省主税局長)
今回の法廷陳述権でございますけれども、税務の専門家として裁判所の許可なく陳述権が認められることが納税者の便宜にも即することになるということで拡充することにしたわけでございます。
それで、では、どういう立場でということになってまいりますと、これは税理士法の第1条に使命がございます、独立した公正な立場でということが税理士法に書いてあるわけでございます。したがいまして、委嘱者たる納税者の援助に当たりましては、納税義務者あるいは税務当局のいずれにも偏しない、要すれば、まさに税法の適正な課税ということに即した独立した公正な立場で、税務に関する専門家としての良識に基づいて行動していただく、こういうふうになると考えております。
これは、今回裁判所の許可なく陳述人として出られることになるわけでございますけれども、従来許可があった場合の陳述をする場合も同じというふうに解しているわけでございます。
「司法制度改革審議会意見書‐21世紀の日本を支える司法制度‐」(公表日:平成13年6月12日)
III 司法制度を支える法曹の在り方
第3 弁護士制度の改革
7. 隣接法律専門職種の活用等
訴訟手続において、隣接法律専門職種などの有する専門性を活用する見地から、
・税理士について、税務訴訟において、裁判所の許可を得ることなく、補佐人として、弁護士である訴訟代理人と共に裁判所に出頭し、陳述する権限を認めるべきである。

弁護士と隣接法律専門職種との関係については、弁護士人口の大幅な増加と諸般の弁護士改革が現実化する将来において、各隣接法律専門職種の制度の趣旨や意義、及び利用者の利便とその権利保護の要請等を踏まえ、法的サービスの担い手の在り方を改めて総合的に検討する必要がある。しかしながら、国民の権利擁護に不十分な現状を直ちに解消する必要性にかんがみ、利用者の視点から、当面の法的需要を充足させるための措置を講じる必要がある。
このような観点に立ち、訴訟手続においては、隣接法律専門職種などの有する専門性を活用する見地から、少なくとも、(中略)・・・税理士について、税務訴訟において、裁判所の許可を得ることなく、補佐人として、弁護士である訴訟代理人と共に裁判所に出頭し、陳述する権限を認めるべきである(なお、この点については、第151回<平成13年>国会での税理士法改正法案の可決・成立により、立法措置が行われたところである。)。